2022年11月5、6日に東京都市大学世田谷祭が行われ、建築学科棟4号館では両日ともにピアノコンサートが開催された。このイベントは今年で10周年を迎える校友会によって企画され、演奏には建築学科の手塚貴晴教授から寄贈されたグランドピアノを用いた。
このコンサートは「都市大には誰でも弾けるピアノがあるということを知ってほしい、またいつでも音楽が聴ける環境であることでコミュニティを広げていってほしい」という願いから開催に至ったという。また生音でピアノを楽しんでほしいという思いから、マイクは用いずピアニストのすぐ側のかなり近い場所にも客席が設置された。
5日のランチタイムコンサートでは自然科学科の高木晋作講師、午後はジャズピアニストのRINA氏による演奏で、いずれも卓越したテクニックと表現力によって観客の心を引き込んだ。また6日のランチタイムコンサートには手塚教授のピアノ講師であった内田朋子氏が登場した。ピアノ演奏においてかなりの技術をもつ手塚教授の先生ということもあり、素晴らしい演奏を披露した。繊細ながらもエネルギーに満ち溢れた演奏と、内田氏の気さくな人柄が伺えるお話によって会場は和やかな雰囲気に包まれた。午後のコンサートでは木住野佳子氏による演奏が行われた。落ち着きのある曲から和風な雰囲気の曲、情熱的な曲など様々な雰囲気の曲を披露し、観客をジャズ音楽の世界に引き込んだ。「リベルタンゴ」の演奏を終え、会場は鳴りやまない拍手に包まれた。木住野氏はアンコールに応じ「はなみずき」を披露すると、ジャズの要素が加わり一層深みを増した演奏は観客に感動を与え、コンサートを締め括った。
今回のコンサートの見どころは演奏だけにとどまらない。ステージ制作には建築学科の学生が携わっていたためである。制作を担当した建築学科2年の元木秀麻さんにお話を伺った。ただの劇場空間ではなく、4号館の落ち着いた色調の空間を活かしたオリジナルのステージを作り上げることを目的としていたそうだ。制作を担当した建築学科2年の元木秀麻さんは「ただの劇場空間ではなく、4号館の空間を活かしたオリジナルのステージを作り上げることを目的としていた」と語った。テーマは「白黒の森」。人工的な平らな床による室内の日常の要素に、新聞紙の切れ端を敷き詰めて森の中のようにした屋外の非日常の要素を織り交ぜながら表現している。さらに素材には新聞紙のみを使用し、不規則な形であいまいな雰囲気を引き出している。また素材を統一するというねらいにより、形を変えやすく、予算面でも融通が利く新聞紙を使用することになったそうだ。限られた時間のなかでも綿密に計画し、オリジナルのステージを完成させることができた。
4年ぶりに対面開催された世田谷祭では、オフラインならではの様々な催し物が繰り広げられた。そのなかでもプロの演奏を聴き本物の音に触れることができた本イベントは、対面だからこそ出来た催しであった。今回のコンサートを機に誰もが弾くことができるグランドピアノの存在が知れ渡り、建築学科棟のピアノを訪れる学生が増えることを期待する。