エコ1チャレンジカップ2023開催 若きエンジニアの挑戦

エコ1チャレンジカップ2023開催 若きエンジニアの挑戦

 “エコ1チャレンジカップ2023~中・高校生による手作り電気自動車コンテスト~”が2023年8月26日に東急自動車学校にて、公益社団法人自動車技術会・関東支部・東京都市大学・日産自動車株式会社の共催で行われた。このコンテストは中高生のチームがバッテリーの電気エネルギーを用いて自動車製作を行い、自動車の基本性能である「走る・曲がる・止まる」を競う。製作や競技を通してものづくりの楽しさを感じながら、エネルギーの尊さや技術の重要性を体験することができる。若きエンジニアにとっての知的挑戦の場だ。

 競技の参加にあたり、選手を待ち受けるのは車検だ。この車検に合格することが競技に参加するための必須条件である。車検は様々な項目で厳正なる審査が行われる。例えば、ブレーキがきちんと効いているか、ミラーで後方が確認できるか、サイズ・モーターバッテリーは規定を満たしているかなど、安全性が問われる。この関門を突破し、参加が認められた選手たちは車両の見直しや改良を徹底し、より万全な状態で競技に挑む。

 その後フリー走行を経て競技が開始された。ドライバーが一人ひとり交代で走行し、チームワークを発揮しながら競技を行った。午後の競技では途中で雨が降り、コースの状態にも変化があるなかでの走行となった。参加者の中には途中で車が停止し、完走が叶わずに悔しげな表情を見せる姿もあった。

 新聞会は、競技を終えて待機場に戻った参加者たちにインタビューを行った。“841GTS”で挑んだ松本工業高校の松工原動機部は、「初めはコースも分からないなかでの参加だったためとても緊張していた。フリー走行の時にはクラッシュしてしまい動揺したが、練習の時を思い出し、心を落ち着けて挑んだ」と述べた。“841GTS”は軽さに優れる発泡スチロールを用いており、使用できる素材も限られているなかで、斬新な発想と工夫を凝らした製作が行われた。また、競技中は最高速度で走るために遠心力を利用している。

 “シブヤ4-4-25”で挑んだ青山学院中等部のチームAGRT(選択技術・マイコン部①・②)は「楽しくてみんなが練習中より上手く走れた。外装をこだわりピンクで目立つ仕上がりにした。今後は機械面をより深く理解して自分たちで課題・改善を見つけられるようにした」と述べた。”シブヤ4-4-25“は速く走るために可能な限り低くして空気抵抗を減らしている。文化祭などで使用した廃材や余ったものなどをリサイクルして使用し、環境にも配慮した製作が行われた。

 本大会を開催した各団体の役員は、今年のエコ1チャレンジカップについて以下のように述べた。大会の会長である自動車技術会関東支部・支部長の大塚氏は、「近年、順位をつけないことが増えてきているが、負けて悔しい思いをして、『次こそ優勝したい』という意欲に繋がる良い機会だと考えている。また、昨年と比べて車検がスムーズに通るようになった。ここで得たノウハウを継承し、進歩してほしい」と述べた。

 大会副会長の東京都市大学・副学長の大上氏は、「若者にモノづくりや実走のノウハウを体験してほしいという思いがあるが、中学生から参加できるものも少ない。自動車を作って、大会に参加して、他のレースを見る。そして、自分もレースを走るという今日の一連の体験を得て、さらに実践を積んでほしい」と述べた。

 同じく大会副会長の日産自動車株式会社・副社長の坂本氏は「当日のレースでは計画通りにいかないことがある。それらのことには理由があり、その都度みんなで考えることが大切だ。選手たちがぎりぎりまで改良を行い、最後までこだわる姿勢には頼もしく感じた。人と人とが集まって反応し、あるモノを作り上げる大切さをみんなに経験してほしい」と述べた。

 本大会を通して若者がモノづくりや競技に挑戦し、モノづくりの楽しさや技術の重要性について考えを深めるきっかけになっただろう。選手たちが最後まで諦めずに改良を行う姿勢や、チームで協力し励まし合いながら取り組む姿がそこにあった。何かに熱中し互いに切磋琢磨し合う。時には嬉しさや悔しさを共有した、そんな経験が、これからの未来を切り拓く糧となるはずだ。

 自動車の製作にあたり、多くの議論や調整、改良を重ねた後の実走など試行錯誤を繰り返した。そうして得られた技術やノウハウは見えない将来に立ち向かう武器となるだろう。そして、次の世代へと継承し、進歩し続けていく学生たちの姿にこれからも期待が高まる。

車検の様子
841GTS
川崎市立 川崎総合科学高等学校 濱口号
青山学院中等部4-4-25

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