遠隔授業・遠隔集会に適したサービスはどれか 

遠隔授業・遠隔集会に適したサービスはどれか 

オンライン会議

Jitsi Meetでプレゼンを行う様子

新型コロナウイルスが猛威を振るう現在、屋内で集団となって過ごすなど「密閉空間」、「密集場所」、「密接場面」の、3つの「密」が同時に重なることを避ける必要性がある。それにともない、教育機関では遠隔授業が世界的に推奨されている。しかし、都市大含めた大学運営側は、複数のサービスと契約するなど、試行錯誤を行っている最中である。そのため用意が間に合わない場合は、教員が独自で解決する必要性が生じる可能性も否定できない。また、学生のコミュニティでの集会も同様に、個人でその問題を解決しなければならない。

そこで、当記事では、遠隔授業・集会に適したサービスを紹介する。

はじめに

皆さんはLMSという単語をご存知だろうか。LMSとは、「Learning Management System」の略で、学習者の成績や学習教材などを、教師が統合的に管理するためのシステムだ。そのため、提出期限が過ぎると提出不可とする機能や提出させた課題の採点を管理する機能などが搭載されていて、授業のお供として活用できる。
それ以外にも、Microsoft TeamsやGoogle Hangout chatのような企業向けグループチャットツールも遠隔授業に活用する事ができる。企業向けグループチャットツールには、LMSのような授業に特化した機能はないが、電話・テレビ電話機能が搭載されている事が多い。難点は、有料プランは利用者全員分を支払うことが前提のため、授業規模によっては非常に高額となる点だ。

グループワークにLMS系を使い、テレビ電話は企業向けグループチャットツールを使うといった複数ツールの併用も可能であることも考慮が必要だ。

この記事は、新聞会が、各サービスの比較を行い、簡単にどれを使うべきかがわかるフローチャートを作成した。これらは、2020年4月13日現在の情報で作成したため、料金や内容に変更が発生している場合がある。導入の際は必ず詳細を自分で確認していただきたい。
また、どの製品もビデオ会議を行うと1時間あたり1.5GB程度の通信量が発生することにも留意したい。

まず、各サービスの比較を行いたいと思う。

各サービス比較

Moodle

  • 系統 LMS
  • 料金 無料
  • ユーザ数上限 なし
  • チャット検索機能 無制限
  • テレビ電話 なし(プラグイン追加で可能)
  • モバイルアプリ あり
  • 公式サイト https://moodle.org/

Moodleは、オープンソースのLMSとして比較的多くのシェアを持っているソフトウェアだ。提出期限がすぎると提出不可とする機能や採点を行う機能といった、授業の補助となるシステム以外にも、学生同士でのグループワークができるよう、チャット機能が備わっている。
アカウントに「管理者」「先生」「学生」「ゲスト(非ログイン者)」といった権限を付与することで、アクセスコントロールを行うため、先生が見せたいもの・見せたくないものの管理が容易である。
また、アップロード容量は設置したサーバーに依存するため、無料サービスではあるが、事実上無制限にアップロードをすることができる。
管理者が手作業でユーザ登録する必要はなく、名前とメールアドレスを記入したcsvファイルを用意しておけば一括登録できる。手間いらずで非常に嬉しい機能だ。
これらは、全てWebページ上で行うことができる。

最大の難点は自分でMoodleのインストールやアップグレードを行う必要性があることである。自ら、もしくは研究室の学生、知り合い等が管理ができるのであれば、設置してみてはどうだろうか。

Jitsi Meet

  • 系統 グループ会議ツール
  • 料金 無料
  • テレビ電話 あり
  • モバイルアプリ あり
  • 公式サイト https://jitsi.org/jitsi-meet/

Jitsi Meetは、オープンソースで開発されている簡便なグループ会議ツールだ。ブラウザ一つで参加できる点が最大の売りだ。固有の特徴として、ユーザ管理というものがなく、発行されたグループ会議URLとパスワードを知っていれば利用できる。
また、ユニークな機能として音声電話から会議に参加する機能もある。この機能は、TeamsやHangout Meet、Zoomにも存在しているが、そちらでは有料プランとなっている。

チャット機能が不要なら、このツールは非常に便利だろう。

Microsoft Teams

  • 系統 企業向けグループチャットツール
  • 料金 有料(一部無料)
  • 学生利用割引有無 有料版相当の無料利用(学校によるTeamsの開放が必要)
  • ユーザ数上限 無料版・下位有料版では300人
  • チャット検索機能 無制限
  • テレビ電話 あり
  • モバイルアプリ あり
  • 公式サイト https://products.office.com/ja-jp/microsoft-teams/group-chat-software

Microsoft Teams(以下Teams)は、Microsoftが運営するMicrosoft 365(旧称 Office 365)内のグループチャットツールだ。Teamsの良いところは、無料版でも、チャット機能・グループでのテレビ電話機能を利用できる点だ。グループでのテレビ電話を必要とするならば有力候補となる。
無料版では、ファイルアップロード制限として「個人2GB/共有スペース10GB」のキツめの制限があること留意する必要がある。
チャット機能はMoodleに任せて、Teamsはグループでのテレビ電話機能として使うのもありだ。

本来Microsoftでは、Teams等Microsoft 365サービスを学生に無料開放しているにも関わらず、東京都市大学ではMicrosoft 365サービスの利用を制限しているため、完全なTeamsを利用できないのは非常に残念である。
通常の有料版の利用には、Microsoft 365のどれかのプランに全員の加入が必須である。その上で、最も低コストの「Office 365 Business Essentials」でも ¥540 ユーザー/月相当の金額がかかる。30人を超える集団授業での有料版の利用は、学校が開放をしない限り金銭的に難しいだろう。

Google Hangout Meet・Google Hangout Chat

  • 系統 企業向けグループチャットツール
  • 料金 有料
  • 学生利用割引有無 有料版相当の無料利用(学校によるTeamsの開放が必要)
  • チャット検索機能 無制限
  • テレビ電話 あり
  • モバイルアプリ あり
  • 公式サイト https://gsuite.google.co.jp/intl/ja/products/meet/

Google Hangout Meet・Google Hangout Chatは、Googleが運営するG Suite内のグループチャットツールだ。Teams同様の大規模な会議機能も備えている高機能なグループチャットツールであるが、有料版のみ(14日間体験利用可)である。
Teamsと同じく全員の加入が必須であるため、学校が導入しない限り難しいだろう。

Youtube Live

大講堂で行う予定だった授業の場合、ライブ配信サービスの利用も可能だ。
他のチャット機能を有するツールには、「ログインさせることが難しい」という問題がある。しかしYoutube Liveでは「URLをメールで送るだけ」で学生は視聴可能である。
配信する際に限定公開とすれば、URLを知っている人のみ視聴可能とすることもできる。
しかしTeamsやHangout Meetでは可能だった双方向でのコミュニケーションはできず、講師からの一方向となる欠点が存在する。
一方向で良いならば事前準備があまりいらないYoutube Liveは便利だ。

Slack

  • 系統 企業向けグループチャットツール
  • 料金 有料(一部無料)
  • 学生利用割引有無 あり
  • チャット検索機能 無料版は直近10000件のみ
  • テレビ電話 なし(音声通話機能はあり)
  • モバイルアプリ あり
  • 公式サイト https://slack.com

Slackは、最近人気が高まっているグループチャットツールだ。新聞会では、Slackを利用して、直接集まらずとも記事の編集を可能にしている。
Slack最大の特徴は、拡張機能を利用して様々な事柄をSlack内で扱えることだ。例えば、受信したメールは、自動的にチャットに投稿されるため、いちいちコピペをせずとも共有することができる。
しかし、遠隔授業に役立つ拡張機能があるわけではない。
研究室や同好会といった小規模グループでの利用をおすすめする。

Zoom

  • 系統 企業向けグループ会議ツール
  • 料金 有料(一部無料)
  • 学生利用割引有無 なし
  • ユーザ数上限 無料は100人
  • テレビ電話 あり
  • モバイルアプリ あり
  • 公式サイト https://zoom.us/jp-jp/meetings.html

Zoomは、近年台頭してきたグループ会議に特化したツールだ。しかしZoomは、エンドツーエンド(E2EE)の暗号化[1]接続するユーザ同士のみが暗号化の鍵を持つことで、途中で傍受されたとしても内容が解読されることを防ぐこと。を謳っていたが実際には行われていなかった事例や同意を得ていないユーザの情報をFacebookに送信していたことを指摘されている。そのため現在の使用は推奨しない。
また、無料版では1回40分制限があるためあまり使いやすいとは言えない。
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WebClass

WebClassは、東京都市大学が導入しているLMSだ。これまでに上げたものとは違い、法人へ専売の形をとっているサービスとなる。このWebclassは、学校法人が購入すること標準機能として、類似レポート検知機能[2]提出されたレポートを総当り検索して類似点を調べる機能が備わっている。学校が管理を行うため、講師は手軽に利用できる。
注意点は、ここに挙げたツールの中では、唯一生徒同士でのチャット機能が備わっていないことだ。このツールだけではグループワークは行えない。

選択のコツ

各社からツールが提供されているが、類似している点が多く、どれを選べば良いか迷うだろう。下記のフローチャートも利用して考えてもらいたい。
当会では、サーバの維持管理ができるならば、高機能で使いやすいMoodleをおすすめする。

チャート
MoodleやSlackのようにビデオ会議機能がないものには、Jitsi Meetを組み合わせることでビデオ会議機能を付け足すこと事も考えたい。

Zoomのような事態に他社製品がならないとは限らない。導入する前に必ず各社Webサイトの製品詳細を読むこととはもちろん、評判の確認も行うべきだ。
最適なツールを利用して、快適に遠隔授業や遠隔集会を行ってほしい。

References

References
1 接続するユーザ同士のみが暗号化の鍵を持つことで、途中で傍受されたとしても内容が解読されることを防ぐこと。
2 提出されたレポートを総当り検索して類似点を調べる機能

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