8月27日にエコ1チャレンジカップ2022(共催:自動車技術会関東支部、東京都市大学、日産自動車株式会社)が東急自動車学校にて開催された。エコ1チャレンジカップは、生徒達が制作した電気自動車を走らせる大会であり、バッテリーカー大会の登竜門となっている。また、今年度は3年振りの現地開催となり、関東の中学・高校16チームが参加した。1日目は午前と午後に分けてレースが行われ、2日目にオンラインで表彰式が開催された。
ー参加団体紹介
初参加の二松学舎大学付属柏中学校・高等学校二松柏コンピュータ部の「MKF-1(エムケーエフ ワン)」は素材が木のみで作られており、余計な部分をなるべく削減した軽い車体となっている。初参加にも関わらず、粘り強い走りを見せた当車両はアイデア賞を受賞した。
青山学院中等部のチームAGRT(選択技術・マイコン部)は従来の「sekyryu1号」と、モーターの巻き数を少なくした「sekyryu2号」で競技に臨んだ。同チームは電気工事士の資格を取る授業の一環で出場しているという。参加生徒は「安全に走行して授業を終えたい」と述べた。
現地走行の部では2012年度から準優勝を続けている和光中学技術部が、悲願の優勝にあたる金賞を受賞した。2010年の初回参加時から受け継いできた「和光電力ww(わらわら)」を軽量化、曲がりやすさを強化し、八の字走行を練習して臨んだ。同チームの部長は「予定していた新しい車両は参加が叶わず、古い車両には長距離への不安もあったが、良い走行が出来た。来年こそ新しい車両でチャレンジしてほしい」と今後への期待を語った。3年生にとっては、本大会への参加は今回が最後であった。
ー大会への思い
気温が30度を超える中、長袖長ズボンで励む参加生徒の姿は大会役員の目にも眩しく写ったという。走行に関しても「車の出来、運転能力の向上に各校の積み重ねを感じる」「各校がそれぞれの状況で出来ることを考え、工夫している」といった声が上がった。
こうした試行錯誤は車作りそのものなのだと大塚裕之大会長は述べる。公益社団法人自動車技術会関東支部長でもある同氏は「試行錯誤やノウハウの伝承は容易ではない。気づいたことは紙に残し、何らかの形にして後輩に伝えていってほしい。車を作る側としても、使う側としても、今回得た何らかの経験を未来に生かしていってほしい」と技術の継承と発展への思いを語った。
大塚氏のような思いを抱く大会関係者は多い。「大会を契機にさらにアカデミックな部分に踏み込んでみてほしい」「エレクトロニクスには様々な分野の知識が組み合わさっていることを体験してほしい」といった参加生徒の次のステップへの思いは大会創設時から変わらない。
一方で、大会のオンライン化や参加生徒の試みなど変わり続けるものもある。団体の特性、参加目的、大会でのアプローチは様々であり、その成果が一堂に会する様は豊かな多様性をはらむ。大会の裾野を広げていきたいと述べるのは日産自動車株式会社副社長の坂本秀行副大会長である。「みんなで協力して大きな成果を成し遂げる経験、やってみることの楽しさは是非多くの生徒に得てほしい」と思いを明かす。エコ1チャレンジカップと冠する本大会の参加生徒へは「自分が楽しいと思うことに取り組み、同時に環境への配慮とは何なのかを考える感覚を是非身につけてほしい。今まで出来なかったことに取り組むのなら、発想を変えて様々なアプローチをすること。可能性を定めず『出来るわけない、無駄だ』と思うものにもチャレンジすることが大切」とのメッセージを続けた。
大会が3者共催となったのは2021年からである。1998年から大会を開催している東京都市大学の副学長である大上浩副大会長は「大学だけの企画・開催には限りがあると感じていた。今回3者共催となって初めて競技を行うことが出来た。今後立場の異なる3者が協力し合うことでより良い大会を継続させていきたい」と大会への思いを語った。
ーまとめ
3年ぶりの現地開催となった本大会は、株式会社東京アールアンドデーの若松競技長もおっしゃっていたように、作ったものを実際に走らせることができるというのはモノづくりの精度を高めるための良い機会となった。また、参加生徒の交流の場にもなったので、今までの日常がかなり戻ってきたように感じた。参加した中高生たちは本大会で、電気自動車の作成や改善、レースの走行だけでなく、本番の緊張感や、トラブルが起こったときの対応なども体験することができた。この経験をもとにモノづくりの楽しさと重要性、環境とエネルギー問題などを認識し、これからより良い未来を作り上げてほしい。