第24回環境ISOフォーラム 「可能性」で終わらず「可能」へ

第24回環境ISOフォーラム 「可能性」で終わらず「可能」へ

 2022年11月26日、東京都市大学横浜キャンパスにて、環境ISOフォーラムが開催された。当行事は、東京都市大学の学生団体である、ISO学生委員会と東京都市大学 ISO 事務局・環境委員会との共催にて実施する環境啓発イベントである。横浜キャンパスが取得しているISO14001とは、地球環境へ配慮した活動を行なっている組織や企業に対して与えられる、環境マネジメントに関する国際的な認証である。ISO学生委員会は、このISO14001の認証の維持や環境意識の向上を目的として活動している。

 フォーラム内では、講演やワークショップ、ディスカッションを行い、環境に対して考えるきっかけを多くの人に提供することを目的としている。本記事では、環境ISOフォーラムの当日の様子に加え、フォーラムをまとめあげたISO学生委員会の本年度会長、山田薫月さんにもお話を伺った。

 学生の言葉と共に開始された開会式では、環境学部学部長、史中超先生よりご挨拶があった。史先生は、横浜キャンパスが今回のISO規格の認証を得られたことを報告するとともに、ISO学生委員会の活動に対して、学生主体で環境活動を行えていることが重要であると語った。続いて行われた活動報告では、全体の他に、環境教育部会や省資源部会、省エネルギー部会に加え、世田谷キャンパスに所属する学生によるSDGs部会から、年間の活動報告に加え、次年度以降の展望が発表された。また、環境学部環境経営システム学科の伊坪先生より、横浜キャンパス全体における活動に関して報告があった。

 1年生対象のワークショップ「いそっと」では、グループディスカッションの時間が設けられ、参加者は太陽エネルギーやバイオマスを普及させる方法について議論を交わした。

 会場では、サブスクリプション、義務化、可視化、自治体、メリットは、といった言葉が行き交い、それぞれのアプローチでアイデアを模索する様子が覗えた。参加した1年生からは「他の人の意見を聞き、こういう考え方もあるのかと驚いた」「異なるバックグラウンドで培われた価値観や意見に触れられた」といった声が上がり、多様な意見に刺激を受けた様子であった。また、「会場には環境学部の学生が多く、話し合いにも入っていきづらいと感じた。無知を経験に変えられたので良かったかなとは思う」という、賛否両論な意見も見られた。 

 講演会では、サイエンスインストラクターやアナウンサー、防災士など様々な経歴を持つ阿部清人さんによる、防災とエネルギーをテーマにしたSDGsサイエンスショーが開かれた。阿部さんは普段より、科学教育や防災教育に力を入れており、サイエンスコミュニケーションと題した、難しい化学を分かりやすい言葉で伝えるという活動を行なっている。自身も福島県で被災した東日本大震災の経験をもとに「楽しく化学・伝える防災」を重要なテーマとして掲げている。

 3つのボールを用いた共振の可視化や、災害時に明かりとして適しているLEDの説明、ドライヤーによるプラスチックカップやゴムボールを浮かせる実験など、普段から「小学6年生が分かる言葉で」を心掛けている、阿部さんならではの講演会であった。

 その後、環境教育部会と省資源部会、省エネルギー部会の長3名と阿部さんによる、パネルディスカッションが行われた。各部会の長から阿部さんに向けて質問や相談が繰り出され、阿部さんの回答と共に3名の感想を交えた上での懇談であった。はじめに、環境教育部会からは、環境教育の内容などに関する質問が出た。これに対し阿部さんは相手のニーズを見極め、ときには話し合い、必要なものを与えることが必要であると語った。次に、省資源部会からは、リサイクルの意義に関する質問が出た。これに対しては、目で見て分かる単純なことから行うべきであり、自分たちがいかに楽しく活動するかが重要だと述べた。最後に、省エネルギー部会からは、快適性を損なわない省エネルギー活動への心配が出た。阿部さんは、新しいことを生み出すだけではなく、他大学からアイデアを借りるなど、外に目を向けてみることも重要であると語った。

 今回の開催について、山田さんにお話を伺った。環境問題が一般に広く取り上げられ、私達が環境に与える負荷への認識は高まっている。フォーラムでは、参加者が議論し、考えることで意識を前に向けられる「環境」を扱いたかった。「可能性」で終わらず「可能」へ、というフォーラムテーマにはISO学生委員会の強い意志を込めた、と語った。初めての試みであったパネルディスカッションについては「外部の方との貴重な議論の場となり、参加者からの手厳しいコメントや次の活動へつながるヒントを得られたことは大きな経験であった」と振り返った。

 阿部さんのお話の中にあった、東京都市大学横浜キャンパスは、今まで訪れた多くの大学の中で1番綺麗で、ごみ箱などが整理されているキャンパスであるという言葉は、ISO学生委員会の活動の成果を表している。キャンパスの状態は学生生活に大きく影響しており、ISO学生委員会はその環境維持に貢献している。多くの学生の学習環境である横浜キャンパスをより良いものとするため、これからの活動に期待したい。

イベントカテゴリの最新記事