校友会川崎支部定期講演会 わがまちは、わが手で開拓を!

校友会川崎支部定期講演会 わがまちは、わが手で開拓を!

 2024年6月17日、校友会館自由が丘クラブにて校友会川崎支部主催の第26回定期講演会が開催された。今回は、染野和夫氏によって「玉川全円耕地整理事業」というテーマで、玉川地域の宅地開発の経緯について講演が行われた。

 

 杉並区と世田谷区の境目付近の住宅地図を見ると、世田谷区内は道路が格子状になっていることがわかる。これは世田谷区で耕地整理事業が多く行われた結果であり、その中でも、東京近郊で最大規模の事業が玉川村で実施された玉川全円耕地整理事業である。その面積は現世田谷区の20%を占めた。大正末期の玉川村は近郊農村で、世帯数が少なく交通の便も悪かった。しかし、当時の東急の前身である田園都市会社が、五島慶太翁の指揮する目黒蒲田電鉄の開通を見越し、調布村の土地を買収した。さらにその土地を造成、田園調布として宅地分譲したことで玉川地域にも市街化の波が押し寄せた。    

 玉川村長である豊田正治氏は、「わが郷土の開発はわれわれの共同の力によって行うべきである」という断固たる意志から、就任直後に土地開発事業の企画を発表した。その後、村会で満場一致の賛成を得て、事業組合の設立に向けて動き始めた。しかし、この壮大な構想が一部の村人に伝わると反対運動が起こった。これは、鉄道が未だ開通しておらず、近隣の村もまだ農村であった西部地域住民や狭い土地しか所有していない小作農家からの反発だ。こうした反対派の存在から、全村同時の事業化は断念し、17の工区に分けて事業化を進めることとなった。村会での議決から3年後に東京府からの認可を受け、玉川全円耕地整理組合が発足した。組合長はもちろん村長の豊田氏である。

 市街化の訪れや鉄道の開通、企業による農地買収の危機感を大きく抱いていた東部四工区は早期に着工し、工事を竣工させた。東急の前身である田園都市株式会社が田園調布、大岡山、洗足の農地を安値で買収し、住宅地として分譲することで巨額の利益を得ていた。それに加えて、農地を売った農家は現金を得るも、その後の生計に困る例が散見されたため、自らの土地の利益を守り抜きたいという思いが東部地区は特に強かったと考えられる。その後、戦争による中断もありつつ中部地区、西部地区と工事は進み、組合設立から30年後にすべての土地の登記が完了した。

 最後に、講演を終えた染野氏は学生へ向けてメッセージを残した。同氏が生まれ育った地域の歴史を伝えているように、「大学生の皆さんも時間が空いている時に、何か地域のためにできることはないか探してみてほしい」と述べた。我々も染野氏の言葉を胸に、残りの学生生活を送っていきたい。

講演会の様子

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