2024年8月24日、東急自動車学校にてエコ1チャレンジカップ2024が開催された。
本大会は、公益社団法人自動車技術会 関東支部、東京都市大学、日産自動車株式会社の共催で行われた。本大会は中・高校生による手作り電気自動車コンテストであり、大会テーマとして、『未来へ続くスマートドライブ』が掲げられた。
競技概要として、バッテリーの電気エネルギーを効率的に活用し、自動車の基本性能である「走る・曲がる・止まる」を競いながら、エネルギーの尊さと技術の重要性を楽しみながら体験する。この競技は与えられたエネルギーで自動車の基本性能を満たしながら、いかに効率よく走行するかを競うもので、創意工夫が求められる知的な挑戦である。
19チームにわたる白熱した試合を繰り広げた舞台裏に密着する。
引用: https://www.jsae.net/kanto/event/eco1/
▼本学の附属校である都市大等々力中高技術班にレース前に話を伺った。
Q: 車種の強みや特徴を教えてください。
私たちの車種はスピードを重視して設計されています。軽量化と空力性能を最大限に引き出すことで、高速走行を実現しています。
Q: スピードを重視するための秘訣は何ですか?
A: 一つのポイントは塗装ですね。特殊な塗装技術を採用して、空気抵抗を減らしました。「シンプル・イズ・ザ・ベスト」をモットーに、無駄な要素を排除して効率化しています。
Q: 自動車部では普段どのような活動をしていますか?
A: 主に、1リットルのガソリンでどれだけ長距離を走れるかをテストしています。燃費向上のための実験や調整を日々行っています。
Q: 今回の意気込みを教えてください。
A: 優勝を目指しています。準備は万全ですし、最高の結果を出せると信じています!
車検の様子
▼本学学長である野城智也学長に話を伺った。
Q: 中高生に期待していることは何ですか?
A: パーツを組み合わせてものを作る体験はとても重要です。私たちの身の回りにある人工物は、基本的な仕組みから成り立っていて、それを理解することでより深い学びが得られます。
うまくいくこともあれば、そうでないこともあります。でも、うまくいったら「よく頑張った」と思いますし、もし失敗しても「なぜ失敗したのか」をしっかり考えることが大切です。一度でうまくいかなくても、試行錯誤を繰り返して学んでいくものです。今日たまたまうまくいったら、それは素晴らしい経験だと思ってほしいですね。
ぜひ、今日来ている中高生のみなさんにこのことを実感してもらいたいです。電気自動車はエンジンで動く化石燃料車に比べて、部品の組み合わせや機能が明確で、非常に柔軟性が高いものです。どのように動くかを考えながら組み立てるのはわくわくすることです。さまざまな動かし方があるということを学んでほしいです。
また、化石燃料車と違って電気自動車はバッテリー容量が限られているので、どうやってエネルギーを効率的に使うかも面白いポイントだと思います。
開会式の様子
関東技術士会は、公益社団法人日本技術士会の一部であり、技術士制度の普及と啓発を目的に1951年(昭和26年)に設立された。我が国で唯一、技術士法に基づき認可された技術士による公益法人であり、2021年(令和3年)には創立70周年を迎えた。
▼関東技術士会 関東支部長 竹本幸一氏に話を伺った。
Q: 走ってみた感想を教えてください。
A: 思ったよりもよく走りましたね。もっと早く電力が尽きるかと思っていたので、驚きました。エンジニアとしてはエネルギーマネジメントが非常に重要だと改めて感じました。限られた電力をどう使うか。速く走るとその分電力消費が早いし、ゆっくり走るとペースは落ちます。そんな細かい部分をどう突き詰めるかが課題ですが、みんなしっかり対応していて、レベルの高い走りを見せています。中高生がこれだけのことをしていると思うと、日本の将来は明るいですね。
Q: エネルギーを使わない車についてはどうお考えですか?
A: 「エネルギーを使わない」ということは現実的に不可能です。人間はどこかに移動したいという欲求を持っていて、誰かに会いたい、景色の良い場所に行きたい、というのが基本的な人間の欲求です。移動にはエネルギーが必要で、我々技術者としては、同じ移動をいかに効率よく、少ないエネルギーで行うかを常に考えています。
例えば小型の電気自動車を作る際も、どうやって軽く作るか、不要なものを省くか、空気抵抗を減らすかが大切です。空気抵抗は、立つよりも座る方が少ないなど、細かい工夫が求められます。同じエネルギーを使うにしても、二酸化炭素を排出する化石燃料よりも、環境負荷の少ないエネルギーを使うことが重要です。電気や水素などもその一つですし、今回のプロジェクトもその方向性に沿ったものです。
Q: 材料や軽量化についてのこだわりはありますか?
A: 自動車の軽量化は非常に重要な要素です。鉄は強度が高いですが、重いというデメリットがあります。そのため、適度な強度と軽さを持つ材料を選ぶのが鍵です。高性能な素材としてはカーボンファイバーなどがありますが、身近な素材で工夫しているところも素晴らしいと思います。例えば木材も、普通の自動車ではあまり使いませんが、今回のような条件では意外と強いかもしれませんね。
Q: 三輪車についての印象はどうですか?
A: 大会のレギュレーションでタイヤが三つ地面についている必要があるため、多くのチームが三輪車を採用しています。これも制約条件として非常に面白いです。前輪が二つか後輪が二つか、幅が広いか狭いかなど、各チームで設計の工夫が見られます。自動車の世界では幅を広くすると安定して曲がれる一方で、今回のような狭いコースでは幅が狭い方が有利かもしれません。この違いを見ていて非常に興味深いです。
豊昭学園 豊島学院高等学校 昭和鉄道高等学校 豊昭学園電気研究部「Dyson’s TYPE R」
▼日産 坂本秀行副社長 ・村田和彦常務に伺った。
Q: 今回のエコワンチャレンジカップで、バッテリーや電動車の技術についてどう感じていますか?
A: 今回、もともとエンジン技術を中心にしていた人たちが、バッテリーやモーターの効率をどう高めるかに挑戦している点が印象的でした。特に車用バッテリーは、通常のレベルとは違った高度な開発が求められるので、その挑戦心が感じられました。
Q: 今日のバッテリーの性能についてはどう思いますか?
A: 同じバッテリーを使った中で、摩擦や抵抗をどれだけ減らすかが重要でしたね。車体を軽量化したり、タイヤの抵抗を減らす工夫が各チームで見られました。運転者の体重や操作も大きく影響するので、最終周まで高いスピードを維持していたのはすごいと思いました。
Q: 今回、フレームに木材やプラスチックなど様々な素材が使われていましたが、それについてはどうお考えですか?
A: 軽量で安全性が高く、操縦性にも配慮した素材選びが良かったですね。地面との摩擦や反応を考慮し、車体の剛性を確保するために色々な素材を組み合わせるのは重要です。また、環境負荷を考えて自然素材を取り入れる姿勢も評価できます。
Q: 学生たちのアイデアの中で、特に面白いと感じたものはありましたか?
A: 「箱型」や「自転車型」に分かれた設計が面白かったです。性能面では自転車型が有利ですが、箱型にも独自の魅力がありました。たとえば、昨年の京急の赤い車体や、西武鉄道を意識したデザインなど、チームごとのこだわりが見られた点が興味深いです。速さだけでなく、楽しみながら作っているのが伝わってきて良かったですね。
ダンボールプラスチック(ダンプラ)を使った独特な形状の車体も面白かったです。実用性は二の次でも、ギリギリのアイデアにこだわる姿勢が魅力的でした。こうした年齢からの創意工夫は素晴らしいと思います。自転車型のほうが速いという面もありますが、各チームの個性があふれていて良かったです。
展示車両 「Nissan Formula E」
モーターのみを動力とするフォーミュラカーで争われる国際レース。2023/24年シーズン(シーズン10)には、世界の自動車メーカーが参戦する11チームが参加する。発生音が小さい電動レーシングカーを使用するため、市街地でのレース開催が可能。2023年には東京で日本大会も開催された。
金賞が松本工業高等学校 松工原動機部の「221GTE」となり、輝かしい成果を収めた。
▼インタビューは金賞確定直後に迫った。
Q: 何名ぐらいで来られたんですか?
生徒だけで13名です。バスで長野から来ました。車両はバスの後部に積んでいます。
本当はレンタカーで来る予定だったんですけど、軟式野球部がバスを貸してくれたので助かりました。
Q: 去年と比べてタイムの伸びはいかがでしたか?
1分10秒ほど縮まりました。ただ、スタート時に電源を入れ忘れて7秒ロスしたんです…。
それに一昨日、もう1つのモーターが故障してしまい、去年はツーモーター体制で挑んだんですが、今年もその予定だったのが叶わず。それが一番悔しかったですね。
Q: レースを終えての感想をお願いします。
ド素人の状態で原動機部に入りました。もともと興味はなかったんですけど、なんとなく気になって入部しました。運転も今回が初めてだったんですけど、そんな中で金賞という結果をいただけて本当に嬉しいです。
このマシンをみんなで協力して作り上げ、整備も仲間が支えてくれました。みんなのおかげでこの順位を取れたと思うと感無量です。まさに努力の結晶という感じです。
Q: 勝因はどこにあったと思いますか?
カーブが重要なポイントだったので、どれだけ正確に曲がれるかを重視して練習しました。特にカーブのテクニックを磨くことに力を入れたので、それが本番でうまく発揮できて良かったです。
Q: 普段はどのような活動をされていますか?
普段は大会で使うマシンの整備をしています。今回は電気自動車ですが、エンジンで動く車両の製作にも取り組んでいます。
Q: 週にどれくらい活動されていますか?
活動は週4日です。土曜、日曜、水曜が休みなので、それ以外の曜日に取り組んでいます。
松本工業高等学校 松工原動機部「221GTE」
技術交流会の様子
表彰式の様子
今回のエコ1チャレンジカップでは、例年と比べて選手たちの成績が著しく向上した。さまざまな工夫を凝らした手作りの電気自動車は、まさに世界で唯一無二の存在となり、大会当日は見事な輝きを放った。2025年度の大会も待ち遠しい。