都市大生がゼロから制作 世田谷発・共同アニメーションついに公開
世田谷区×都市大アニメーション(都市大の有志)によるアニメ制作
キービジュアル(イラストレーション: En)
アニメーション制作は以下のような役割分担のもと進んでいる。
- 監督(作品全体のクオリティ管理)
- 脚本(作品のストーリー)
- 絵コンテ(映像の画面作り)
- 制作進行(作品制作全体におけるマネジメント)
- 撮影(映像の特殊処理)
- 作画監督(絵のクオリティ管理)
- キャラクタデザイン(キャラクタのデザイン)
- 作画(映像の実制作)
- 背景(映像の背景)
- 音楽(映像を盛り上げる音づくり)
新BOPとは?
アニメーションのもととなった新BOPとは、子どもの健全な育成や子育て家庭の支援を目的とし、新BOP学童クラブ(学童保育)とBOP(放課後子供教室)とを統合した、区独自の事業である。
世田谷区では、放課後子供教室を「Base Of Playing(遊びの基地)=BOP(ボップ)」と呼んでいる。BOPは小学校の施設などを活用して、子どもたちに安全・安心な遊び場を提供する。異なる年齢の子どもたちが共に遊ぶ中で、創造性・自主性・社会性を培うことを目指し、健全育成を図っている。
アニメーション制作では、現地調査が詳細な背景デザイン描写に生きる。玉堤小学校への現地調査に新聞会も同行した。玉堤小学校は本学世田谷キャンパスから徒歩数分で着く小学校である。玉堤小学校で実施されている新BOPの対象は、世田谷区在住または世田谷区立小学校在籍の小学1~3年生で、その保護者が就労・疾病等により、放課後家庭において継続して適切に保護・育成にあたることができない家庭の児童である。ただし、心身の発達等により、個別的配慮が必要な状態にある児童は6年生まで利用できる。
現地調査の様子
「アニメーション制作について」
ー今回のアニメーション制作に至った経緯を教えてください
放課後、子ども達に遊び場を提供する世田谷区独自の事業に新BOPというものがあります。Wワークや主婦、児童系の都市大生を含めアルバイトのスタッフが主なんですけれど、慢性的に人手不足みたいです。世田谷区役所職員さんたちは、私が1年生の頃にデジタルコンテンツ研究会(以下デジコン)で作ったアニメを見て連絡してくれました。まずは、アニメというキャッチーなコンテンツで新BOPという存在をみんなに知ってもらおう!という目的のもと、世田谷区役所と一緒に協議を重ねながら、手探りでアニメ制作を始めました!(監督: 山下マナト)
ー作品のテーマやストーリーを教えて下さい。
作品は大人の視点で描いています。指導員補助のアルバイトとしてBOP(学童のようなもの)にやってきた主人公は、大人には考えられない世界観を持つ子どもたちが文字通り「別の生き物」のように見えてしまいます。翻弄されつつも、「触れ合っていくなかで分かることもある」と指導員にアドバイスをされ、多種多様な子ども達と向き合っていくストーリーになっています。
作品のテーマには、「触れ合いと理解」があります。子どもだけが出来る考え方に対して理解することが出来なくても、溢れ出るその無邪気さゆえの気持ちに好感を持つ人は多いと思います。それは、子どもと触れ合うなかで得られる大切な感情なのではないかと考えています。今回BOPのアルバイト募集のアニメーション制作では、BOPで働く魅力を描いた上で、その大切な感情のキラめきを余すことなく表現できるように制作陣と話し合いを重ねに重ねました。(脚本: 大竹龍也)
脚本制作の時点ではたくさんの案を出しました。前述した通り、『新BOPという存在をまずは知ってもらう』ことが目的だったので、ひたすら『新BOP!』と叫ぶだけの案や子供達を踊らせるアニメーション、新海誠風などたくさんありました。
世田谷区の人たちも頭が痛かったでしょうね(笑) 実際BOPと児童館に視察に行ってみたり、働いている職員の経験や考えを聞いて脚本担当の大竹君が書いたベースに、私と制作進行のあやさんが今の脚本を書き上げました。脚本を書き上げただけでもうやり切った感に満たされたんですけれど、それが楽しい楽しいアニメ作りの始まりでした。(監督: 山下マナト)
制作されたアニメ「新BOPへようこそ!」本編のキャプチャ
ーどのようなツールやソフトウェアを使っていますか?
プロジェクトの管理ツールはnotion、 Google Workspace、 Discordを使用していますが、結論から言うと、音楽や背景、編集など制作の全ての工程で、使うソフトを指定していないので、みんなバラバラです。と言うのも今回のアニメーションは、プロでも専門学生でもない初心者である都市大の学生が35人で作るアニメってところが尊いところです。なのでできるだけみんなの個性を出したいと、監督の私は思ってます!(みんながそう思っているわけじゃないので、この件は物議を醸しました(笑)
そう言う思想があるので、ソフトだけではなく、デバイスやスタイル全て自由に書いてもらってます。みんな絵上手いし。よく使うツールとしては、iPad(FlipaClip、 ClipStudio、 ibisPaintXなど)、 ペンタブ(ClipStudio)を使っている人が多い印象です。参考までに私はiPadで絵を描くのでibisPaintXとFlipaClipを併用しています。
編集は主にAdobe系ソフトを使っています。また必要があれば下書きやフレーム補完、動画編集などでAIツールも積極的に使用しています。これもまた学生である、それも理系である私たちの強みだと思います! (監督: 山下マナト)
作画の様子_作画: 山下マナト(gif画像)
ー制作の過程で一番時間がかかる部分はどこですか?
単純な時間でいえば、脚本が2ヶ月くらいかかりました。
私の力量的にみんなをうまく巻き込むのが難しく、初めてなのでかなりスローペースで取材、協議、仮案だし、協議、仮案だし、協議….という感じで進みました。なんとか脚本担当の大竹君がいい草案を捻り出してくれたので、そこからは私と制作進行の川口綾音の2人で大学やオンラインで話し合って完成させました。
最も工数がかかった過程といえばやはり作画です。実制作期間自体は1ヶ月ですが、30人で120カット以上を同時並行させたし、みんな初めての経験なので、少しできたら進捗を共有してフィードバックを出して少しずつ作っていきました。部活や仕事ではなくあくまで完全に文字通り課外活動なので、遅れるメンバーも多くいましたし、前述したように私は個性を大事にしたいと言う思想だったのですが、作っていく中でそうではないメンバーの反逆もありました(笑)。あとは缶詰作画合宿を私が個人的にやってみたくて行ったんですが、それの準備もなーんか大変でした(笑)。作品制作それ自体も大変でしたが、チームビルディングにも骨が折れました。(監督: 山下マナト)
冒頭のシーンの絵コンテと映像
ーアニメーション制作においてどのスキルが特に役立っていますか?
根気です。同じような絵を何枚もかいてパラパラ漫画のように描く作業なので。(監督: 山下マナト)
ー制作を通じて得た一番大きな学びは何ですか?
制作を通じて得た一番大きな学びは、悪戦苦闘しながらもモチベを維持して人生で初めてアニメcmを一から作れていることですかね(笑)。私は絵は少ししか描けなくて、それでも、友人の力になれたらいいなと思ったり、実際にcm作りをしてみたいなと思って都市大アニメーションに入りました。
制作進行になってみて分かったことは、学生達でアニメーションcm制作をすると、長い期間を必要とする大きなプロジェクトになるということです。学生には、授業、テスト、学校生活、遊び、アルバイト、就活、卒業論文があります。そんな忙しい中参加して貢献して、一緒に取り組んでくれていることに感謝しかないなと感じています。
現在は、アフレコに向けて台本作成や動画編集をしてくれている学生と統括がいます。それらは個々の負担が大きいため、私も何か力になれるよう全力を尽くしたいと考えています。インタビューを受けて改めてアニメーション制作から学んだことを考えてみましたが、私は作品が完成したその後に自身の大きな学びを理解するのではないかと思っています!(制作進行: 川口綾音)
アニメ制作の様子(都市大アニメーション 作画部)
いろいろなことがありすぎて、一番大きな学びと言われると大変難しいですが、思い返すと大学生活で色々やっててよかったなと思います。と言うのも、今は壮大な伏線回収をしている感覚です。
1年生の時にデジタルコンテンツ研究会(以下デジコン)でアニメ作りをし、それが4年生の時に声をかけてもらうきっかけになりました。デジコンが本件の参加を見送り、それでもどうしてもアニメ作りをやりたかったため個人でこの案件を受けましたが、そこからメンバーを集めるのは大変でした。それでも、これまでデジコンの会長としてや、他のサークル、いろいろな活動をしてきたのでその時の友達や人脈、実績が活きて人が集まってくれたし、動画編集やアニメーション、Webプログラミングの技術といった私の単純な創作能力だけではなく、チームを引っ張っていく能力や、行動力それらを注ぎ込んだの集大成的な作品になりそうなので、思い入れが深く、またやはりこれまでやってきたことが生きていることを身をもって実感しています。(監督: 山下マナト)
左: 山下(監督)、右: 川口(制作進行)
ーもしプロジェクトが成功したら、どんな反応を期待していますか?
それはもう、褒め称えられたいです。でも作品が完成さえすればなんでもいいと思ってます。完成したら観てください。死ぬほど頑張って描いたので。(監督: 山下マナト)
世田谷区×都市大アニメーションのあゆみ
缶詰作画合宿の様子
アフレコの様子 伊東健人(左)、上田麗奈(右)
公式HP: https://manapuraza.com/
インフォメーション
2025年3月14日公開。
本編:https://youtu.be/zLuemAdQlMs?si=K0wbt-h9lISUi5RO
(C)2025 世田谷区・都市大アニメーション
YouTubeサムネイル(世田谷区公式YouTubeチャンネル)