東京都市大学校友会 川崎支部 第九陸軍技術研究所跡見学

東京都市大学校友会 川崎支部 第九陸軍技術研究所跡見学

 東京都市大学校友会川崎支部は、2025年5月に明治大学生田キャンパスに位置する第九陸軍研究所跡の見学を実施した。

陸軍第九研究所とは?

 第九陸軍研究所(通称:登戸研究所)は、1939年に大日本帝国陸軍によって設立された諜報機材や中華民国の偽札、特殊兵器などの開発を担っていた軍事機関である。(生田に位置しているにもかかわらず登戸研究所という別名が命名されたのは敵国の諜報活動による場所の特定を避ける為。)

第九陸軍技術研究所で行われていた研究・開発

 代表的な研究成果としてあげられるのが風船爆弾である。風船爆弾とは名の通り風船にバラスト、爆弾などを括り付け、米国本土上空で爆弾を投下することで本土爆撃を敢行、米国人に対して大きな恐怖心を与えることを目的に作られた秘密兵器である。

 第九陸軍技術研究所跡はそれら風船爆弾がどのように作られていたかを生々しく伝えている。展示内容によると風船爆弾の風船は和紙が使用され、それらをこんにゃくから作られた糊を用いて接着することで製造されていたという。これらの製造には風船爆弾十個当たり零式艦上戦闘機一機分の製造費が投入され、終戦までに約9300発作られた。この製造作業には女性が駆り出され、一日12時間程度の過酷な重労働を強いられたという。このほかにも第九陸軍研究所の戦時中の活動は多岐にわたり、中華民国の偽札制作や、本土決戦(オーバーロード作戦)時における汚染された水資源をろ過し、飲用できることを目的に用意されていたろ過装置など、太平洋戦争の経過とそれに伴う技術的な兵器開発の現場の跡を目の当たりにできる。

▲風船爆弾 1/10模型

 ▲本土決戦に向けて用意されたろ過装置

キャンパス内に残る戦争遺跡の数々

 上記に記した通り、明治大学生田キャンパスの土地は戦時中第九陸軍研究所として利用された歴史を持つ。その歴史により、明治大学生田キャンパスの土地には様々な戦争遺跡の姿が垣間見える。その中でも代表的なのは動物慰霊碑であろう。陸軍第九技術研究所では様々な兵器開発のために動物実験が行われてきた。そういった兵器開発の中で用いられた実験動物の魂を鎮魂するために建てられた動物慰霊碑が同大学生田キャンパスの外れに位置している。この慰霊碑は現在でも明治大学農学部の研究に用いられた実験動物たちを供養するための動物慰霊祭が行われているそうだ。このようにキャンパスには今も戦争にまつわる歴史がかかわっていたということが見てとれる。

▲明治大学動物慰霊碑

▲弾薬庫跡

▲生田神社

感想

 明治大学生田キャンパスには第九陸軍技術研究所跡を含め、旧日本軍の活動を物語る遺構跡が残され、それらの痕跡は書籍やインターネットを閲覧することでは得られない戦時中の国の総力戦の様子や空気感を直接感じ取ることが出来る。近年数多くの国家間武力衝突が勃発し、平和な世の中とは言えない世界の中で今一度こういった過去の歴史とその時代に生きた人々の生き様、またその痕跡に目を向け学びなおしてみることも一つの手ではないだろうか。読者の皆様にもぜひ第九陸軍技術研究所跡の見学をお勧めしたい。

▲東京都市大学校友会 川崎支部の集合写真

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