東京都市大学世田谷キャンパスで毎年開催される建築学科同窓会・如学会主催の建築祭が今年で17回目を迎え、新たな挑戦として「100X」として生まれ変わる。従来の「建築100人展」を進化させ、学生と卒業生だけでなく、参加者も共に建築祭を創る体験型イベントとして注目を集めている。
今回の新企画について、イベント主催者である100X委員会委員長・麻殖生龍哉(まいおりゅうや)氏と如学会前会長・山岡嘉彌(やまおかかや)氏に話を伺った。麻殖生氏は、「建築学科の卒業生・学生だけでなく、建築を取り巻く関係者全員でイベントを作り上げたい」と熱意を語る。高校生や他学科の学生も参加できるよう、展示やプログラムには視覚的・体験的な工夫が施されている。

▲100X委員会委員長・麻殖生龍哉氏(左)と如学会前会長・山岡嘉彌氏(右)
100Xの誕生――「建築100人展」からの進化
従来の「建築100人展」は、本学建築学科の卒業生や学生の作品を一堂に会させる祝祭として親しまれてきた。しかし、如学会会長であり現教授の手塚貴晴(てづかたかはる)氏は、「展示するだけでなく、参加者自身も建築祭を創る場にしたい」と提案。これにより、名称が「100X」に変更され、展示を見て楽しむだけでなく、参加者も議論や体験を通して建築を考えるイベントへと進化した。
麻殖生氏は、「学生研究会の発表から学んだ、空間を体験して楽しむ面白さを、全体のイベントに取り入れたかった」と語る。展示空間を体験型にすることで、建築を「見る」から「感じる」へと変換する試みだ。

▲「100X」誕生について語る山岡氏(左)と麻殖生氏(右)

▲如学会会長・本学の教授である手塚貴晴氏(右)
建築100人展――卒業生と学生の情熱が交わる舞台
「建築100人展」は100Xの中核を担い、卒業生と学生が共に創る場である。卒業生の社会での活動や学生作品が展示され、来場者はその思いや努力、創意工夫に触れることができる。麻殖生氏は「卒業生の経験を通じて学生は建築の可能性を実感し、自らの進路や発想の幅を広げることができる」と話す。
展示は単なる鑑賞に留まらず、来場者が意見を交わし、議論を通じて建築祭に参加する体験型の形式となっている。作品を通して、卒業生の情熱が学生に直接届き、未来の建築を共に描く感覚が生まれるだろう。

画像は東京都市大学建築祭「100X」HPより引用
トークイベント「30s×100人」――若手活動家の思いに触れる
30代を中心とした若手建築活動家が登壇するトークイベント「30s×100人」は、学生に現場の声を届ける場である。登壇者同士の議論に加え、参加者がグループディスカッションに参加することで、学生は建築に対する多角的な視点を養う。
麻殖生氏は「学生と年齢が近い卒業生との議論を通じ、多様な視点を学び、進路や考え方の選択肢を広げてほしい」と語る。テーマは「公共性について」。社会や都市、建築の公共的役割について議論することで、学生は理論だけでなく、現場の感覚や情熱に触れることができる。

画像は東京都市大学建築祭「100X」HPより引用
シンポジウム「Public realm -公共の領域」――公共空間の未来を考える
100Xの目玉の一つであるシンポジウム「Public realm -公共の領域」では、英語の “Public”と日本語の「公共」の意味の差に着目し、公共空間のあり方を探る。行政・教育・民間の異なる立場からの議論に加え、世田谷区長・保坂展人(ほさかのぶと)氏、本学学長・野城智也(やしろともや)氏、本学教授・手塚貴晴(てづかたかはる)氏がセッションに参加する。学生は実務と学問の双方の視点に触れ、公共空間や都市計画への理解を深めることができる。
麻殖生氏は「学生が聞くだけでなく、議論に参加して未来の公共空間を考えるきっかけにしてほしい」と語る。手塚教授も「参加者が面白いと感じ、建築を通して社会を考える体験ができる場にしたい」と熱意を示している。
このシンポジウムでは、公共空間の本質、領域の境界、理想の都市像などが議題となる。学長や区長、教授がそれぞれの立場から意見を述べ、学生も発言や質問を通じて建築と社会の接点を実感する。ここでは単なる学びの場ではなく、未来の都市や公共空間に関わる可能性を体感できる貴重なセッションとなる。

画像は東京都市大学建築祭「100X」HPより引用
多彩なプログラムで建築を五感で体験
さらに、学生のアイデアを評価する「ARCHITECTURAL COMPETITION」、学生研究会発表、国際委員会イベント、世田谷ブックカフェ、ジャズピアニストRINA氏によるライブなど、多彩なプログラムが並ぶ。建築を「見る」だけでなく、「感じて体験する」ことで、学生だけでなく来場者全員が建築の魅力に引き込まれる仕組みが整っている。
未来へのメッセージ――建築で広がる希望
麻殖生氏は最後に、学生・教職員・来場者に向けてこう語った。
「建築を取り巻く世界を、ぜひ心から楽しんでほしい。他学科の学生も、年齢や専門の違いを越えて参加し、建築に触れることで新しい興味や挑戦を見つけてほしい。卒業生、学生、参加者が一体となって生み出す100Xは、ただの展示やイベントではなく、建築の未来を共に描く場である」
11月1日(土)から2日(日)にかけて開催される世田谷祭「100X」は、卒業生と学生の情熱が交わり、来場者の心にも火を灯す。建築の可能性、未来の都市、公共空間のあり方を考え、感じ、体験する――その熱気は、ここに来たすべての人の心に、希望と感動として刻まれるだろう。
東京都市大学建築祭「100X」開催概要
日時:2025年11月1日(土)10:00~19:00
2025年11月2日(日)10:00~17:00場所:東京都世田谷区玉堤1-28-1
東京都市大学世田谷キャンパス4号館1階同時開催:
建築100人展、シンポジウム、大学ピアノLIVE、学生の学祭課題展示及び講評会、世田谷ブックカフェ
東京都市大学如学会HP:如学会 – 東京都市大学[旧・武蔵工業大学]建築学科同窓会 東京都市大学建築祭「100X」:100X – 東京都市大学建築祭2025