図書館の奥の貴重図書室を探訪

図書館の奥の貴重図書室を探訪

▲貴重図書室全景

本学世田谷キャンパス図書館の4階の一角には、「貴重図書室」という一般の立ち入りが制限されている部屋がある。今回、校友会からの招待を受け、取材の機会をいただいた。

この貴重図書室には、退官した先生方が残した貴重な文献が保存されている。中でも収蔵数が最も多いのは、元建築学科教授・蔵田周忠氏の蔵書である。合計で5000冊以上にのぼるその蔵書は、「蔵田文庫」と呼ばれている。

▲羅生門初版本

蔵田文庫には、戦前・戦後の建築関連の文献はもちろん、当時の海外図書や科学史コレクションが収蔵されている。さらに、羅生門の初版本や喜寿褒章受章のお祝いの寄せ書き、国内外の教授や建築家とのやり取りを記録したはがきや手紙など、蔵田教授自身に関連する資料のほかにも文学的に貴重な書籍も多数所蔵されている。特に貴重なのは雑誌『NIPPON』である。これは戦前に海外向けに日本を紹介する形で発刊された雑誌で、蔵田文庫には多く収蔵されている。しかし、出版社が所蔵していた原版は戦争により失われてしまった。そのため、戦後に復刻版を発刊する際には、蔵田文庫の蔵書が参考にされたそうだ。

ほかにも、東横女子短大の系譜を受け継ぐ等々力キャンパス女性文化研究所から引き継いだ和装本や、建築家で非常勤講師であった石本喜久治氏、白鳥儀三郎氏、横濱勉氏から寄贈された建築・都市計画関連の書籍も収蔵されている。

▲貴重図書室内の配置

今回の見学で記者の印象に残ったのは、蔵田教授がコンペに応募した際の青焼き図面である。コピー機がなかった当時は、トレーシングぺーパに引いた書き上げた原図を青い感光紙の上にかぶせることで複製する青焼き図面が主流であった。しかし、これらはすでに過去のものとなってしまい、記者も実物を見るのは初めてであった。蔵田教授が遺したおかげで、初めて青焼き図面を直に見ることができ、大変感慨深かった。

▲青焼き図面

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