2024年6月6日、東京都市大学世田谷キャンパス7号館にて「内閣府総合知ワークショップ」が開催された。イベントは、内閣府による総合知の基本的な考え方とその推進に関する説明から始まり、その後、東京都市大学の3つの教育事業が発表された。本学必修科目「SD PBL」、イノベーション教育プログラム「ひらめきプログラム」、学際的研究組織による未来都市研究である。
「SD PBL」と「ひらめきプログラム」では、履修した学生と担当教授が登壇し、それぞれの視点から授業に対する率直な感想や今後に向けた改善点を述べた。休憩を挟んで全体ディスカッションが行われ、各発表を受けての質疑応答や教育方針に対する意見交換が行われた。総合知を育む大学教育の重要性や今後の方針についての議論も深まり、ワークショップは幕を閉じた。
前編では総合知の紹介、「SD PBL」の発表を取り上げていく。
総合知とは「多様な『知』が集い新たな価値を創出する「知の活力」を生むこと」と内閣府で定義されている。ここでの多様な「知」とは、『属する組織の「矩」を超え、専門領域の枠にとらわれない多様な「知」が集うこと』。新たな価値を創出するとは、『安心・安全の確保とWell-beingの最大化に向けた未来像を描くだけでなく、科学技術やイノベーション成果の社会実装に向けた具体的な手段も見出し、社会変革をもたらすこと』と内閣府で定義されている。
本学の教育目標は、「公正・誠実さと自己研鑽力をもち、『都市』に集約されるような複合的課題に取り組むことができ、多種多様なボーダーを超えて新たな価値を見出すことで持続可能な社会の発展に貢献できる人材を育成する」ことだ。本学では、変化する社会課題に対応するため、イノベーティブなアイデアや解決策を生み出す教育研究が推進されており、その代表例として今回の3つの教育事業が紹介された。
「SD PBL」は本学において全学科必修科目となっている。1年次から3年次まで、「SD PBL(1)」から「SD PBL(3)」と段階的に名づけられている。各学科ごとに定められた教育目標に向け、必要な能力や専門的知識を修得するため、卒業研究に先立ち、大学での学びを主体的に実践できる場として位置づけられている。分野横断的な学びではないが、学びの総合という側面から見れば総合知であり、人材育成に向けた基礎を築くことを目指している。
伊藤通子教授よりご提供
講演は、最初に本学メディア情報学部情報システム学科を卒業し、現在は大学院環境情報学研究科に在籍する平綿素望さんが「SD PBL(3)」から得た学びを学生目線で紹介した。その後、教育開発機構副機構長の伊藤通子教授が「SD PBL」と総合知に関してお話しされた。
平綿素望さんによる発表
伊藤通子教授による発表
講演の後日、伊藤教授から話を伺った。
ー「SD PBL」の具体的な目的は何でしょうか?
大学が目指す、「持続可能な社会の発展に貢献するイノベーティブな人材の育成」のために、学習者中心の教育への転換やリーダー気質の育成を図っています。実際に、様々な企業から都市大生は優秀で真面目だが、提案型の主張をもっとしてほしいと言われたこともあり、今後も指導していく必要があると思っています。
ー学生の役割とは何でしょうか?
自分で、自分の学び方を体得する、自分の学ぶ動機を高める、自分の可能性に気付き拓くこと。そのためにも多くの成功と失敗を経験し、自分の中で学び方や生き方を見出していくことにあると思っています。結果にこだわらず、自分の意思で行ったプロセスに対して、自信が持てることが大切です。
ープロジェクトの成功や学生の学びはどのように評価されますか?
得意な学生でも苦手な学生でも、挑戦することに意識を見出せるようにポートフォリオ評価とパフォーマンス評価を統合した総括的評価を行っています。
ー今回の発表を終えての感想や今後の展望等を教えて下さい。
今回、平綿さんが学生の立場から遠慮なく本音を言ってくれたことで更に課題が見えてきました。教員側も学生に干渉しすぎず、上手くサポートできるように訓練していかなければならないと感じました。
後編に続きます。後編はこちらから↓
内閣府総合知ワークショップ【後編】:https://tcuprs.com/?p=3916