【企業見学】ナノの世界で、未来を描く—キヤノンアネルバの成膜技術に迫る—

【企業見学】ナノの世界で、未来を描く—キヤノンアネルバの成膜技術に迫る—

2025年6月25日、本学の学生団体 知湊会および環境経営システム学科学生会の学生たちが、神奈川県川崎市に本社を構えるキヤノンアネルバ株式会社の工場を見学した。この企画は、知湊会の活動の一環として実施された活動の一環として、知湊会と環境経営システム学生会の合同主催で実施されたものである。同社で勤務経験があり、現在は校友会副会長を務める金子正樹(かねこまさき)氏(1980年 工学部経営工学科卒)が引率した。

真空技術の粋を極めた製造現場

キヤノンアネルバ株式会社は、1967年の創業以来、超高真空技術を基盤とした成膜装置や真空部品の開発・製造・販売を手がけている。現在はキヤノンの完全子会社として、半導体・電子デバイス産業の最先端を支える企業として国内外に広く知られている。

同社の主力製品であるスパッタリング装置(PVD)は、半導体メモリ、HDD、イメージセンサ、そして次世代メモリであるMRAMなどの薄膜形成に不可欠な存在であり、世界市場で約75%のシェアを誇る。さらに、真空計、質量分析計、ヘリウム漏れ検査装置など、超高精度が求められる部品製造にも力を入れており、日本のものづくりを「縁の下」で支えている。

クリーンルームから見た「Adastra」

学生たちは企業説明を受けたのち、クリーンルームの見学へと向かった。衛生管理のため見学者はオーバーシューズを履き、ガラス越しに見学を行った。クリーンルーム内では作業者が全身を覆うクリーン服を着用し、服の色によって社員・来客・作業員の区別がされていた。

見学中、学生たちの目を引いたのは、同社の最新鋭成膜装置「Adastra」である。これは、半導体デバイスや電子部品の配線層や機能膜などに対応する多用途プラットフォーム装置で、モジュールの自由な組み合わせにより多様な生産ニーズに応えられる。さらに、従来機種と比べて装置の省スペース化・低消費電力化が図られており、より高い生産性と付加価を実現している。

この革新的な装置は、2024年度グッドデザイン賞・金賞を受賞。約3mもの高さを誇る本機の開発には、機械・ソフト・ハード設計など多方面の技術者が関わり、多大な苦労と情熱が注がれたという。

真剣な眼差しでクリーンルームの説明を聞く学生たち

最新鋭成膜装置「Adastra」について多くの質問が飛び交った

「壊れないための設計思想」に感銘

見学を終えた学生たちは、それぞれの学びを持ち帰った。

● 知湊会の学生の声

「わずかなホコリが装置に致命的な影響を与えるという話を聞いて驚きました。私たちが使っているデバイスの裏側には、これほど緻密な制御があることを知り、技術に対する見方が変わりました。特に、“壊れたら直す”ではなく、“壊れないように運用で守る”という発想がとても印象に残りました。」

また、製造装置におけるソフトウェア制御・UI設計・データ管理に自らの学びが活かせることに気づき、AIや機械学習の観点から、装置の稼働データの蓄積や金属ロスの削減など、技術応用の可能性についても言及した。

環境経営システム学科学生会の学生の声

「超高真空という技術を活用したナノ単位の加工を見て、新たな未来が開けると感じました。また、環境に配慮し、持続可能な社会を実現しようとする企業姿勢に感銘を受けました。」

技術を未来へ、社会とつなげる

真空という見えない空間をコントロールし、数ナノメートルの世界を操るキヤノンアネルバの技術。その精密さと、それを実現するために積み重ねられた工夫と努力は、学生たちの目に強く焼き付けられた。今回の見学を通じて、学生たちは自らの学びと最先端技術との接点を見出し、将来の進路や研究への視座を得る貴重な機会となった。

キヤノンアネルバ株式会社

  • 所在地:神奈川県川崎市高津区末長3-5-1
  • 設立:1967年
  • 事業内容:
    • スパッタリング装置(PVD)や成膜装置の開発・製造 
    • 販売真空計・質量分析計・漏れ検査装置などの真空関連部品の製各種保守・点検サービス
  • 企業HP:トップ | キヤノンアネルバ株式会社

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